第18週(第71回から第74)

ケセン語訳新約聖書:ルカによる福音書

第71回配信(2008.1.14)
【ごせェ-やぐ】(マタイ2・16)
◆マタイ2章16節に【さて、ヘロデは占星術の学者たちにだまされたと知って、大いに怒った。】(新共同訳)とあります。◆「怒る」ことを気仙では「ごせェ-やぐ」といいます。ケセン語が解らない人でもその意味がとれるよう「憤怒」の言葉を当てて「憤怒(ごせ)ェ 焼(や)ぐ」と訳しています。「憤怒(ごせ)ェ焼(や)いで、怒鳴りつけた。」(怒って怒鳴りつけた)のように使います。◆そこでケセン語訳では【さで、ヘロデァ、星占(ほしうらね)ァの巫等(みごァど)に軽々(ただ)騙(だま)されだど知って、何もかにも憤怒(ごせ)ェ焼(いェ)ァだ。】と訳しています。(「ケセン語訳聖書を楽しむ会」より熊谷雅也が要約) ※ケセン語訳聖書の情報はイー・ピックス出版 http://www.epix.co.jpへどうぞ

第72回配信(2008.1.15)
【ナジルの人】その1(マタイ2・22〜23)
◆マタイ2章22〜23節に【夢でお告げがあったので、ガリラヤ地方に引きこもり、ナザレという町に行って住んだ。「彼はナザレの人と呼ばれる」と、預言者たちを通して言われていたことが実現するためであった。】(新共同訳)とあります。◆ここで「ナザレの人」と言われているのは「ナザレの人」と「ナジルの人」とを掛けている言葉だと言われています。◆「ナザレの人」はナザレに住む人、ナザレ出身の人のことですが、「ナジルの人」とは「ナジルの誓いを立てた人」の事です。<続く>(「ケセン語訳聖書を楽しむ会」より熊谷雅也が要約) ※ケセン語訳聖書の情報はイー・ピックス出版 http://www.epix.co.jpへどうぞ

第73回配信(2008.1.16)
【ナジルの人】その2(マタイ2・22〜23)
◆「ナジルの人」というのは、神様に願を懸けて「ナジルの誓い」を立て、自分を清らかに保っている人のことをいいました。◆「ナジルの誓い」とは、ブドウから作ったものを一切口にしない、体にカミソリを当てない、死んだ人に触らないという三つの誓いのことで、これを公に宣言した人のことを「ナジルの人」といったのです。◆誓いは30日間は守り、それ以降は自分の意志で止めることが出来ました。◆中には洗礼者ヨハネのように、一生誓いを守り通す人もありました。<続く>(「ケセン語訳聖書を楽しむ会」より熊谷雅也が要約) ※ケセン語訳聖書の情報はイー・ピックス出版 http://www.epix.co.jpへどうぞ

第74回配信(2008.1.17)
【ナジルの人】その3(マタイ2・22〜23)
◆マタイ26章29節に【言っておくが、わたしの父の国であなたがたと共に新たに飲むその日まで、今後ぶどうの実から作ったものを飲むことは決してあるまい。】(新共同訳)とあります。実は、イエスは最後の晩餐の時、ナジルの誓いを立てナジルの人になっていたことがわかります。◆初代教会のクリスチャンたちが自らを「ナザレの人」と言うとき、迫害や軽蔑の対象だったその言葉の裏に「ナジルの人(=聖なる人)」という意味を意識し、自らの信仰に誇りを持っていたと思われます。(「ケセン語訳聖書を楽しむ会」より熊谷雅也が要約) ※ケセン語訳聖書の情報はイー・ピックス出版 http://www.epix.co.jpへどうぞ
※写真は『ケセン語新約聖書:マルコによる福音書』。マルコは四巻中最も長く、朗読CDも4枚になっています。